弥生研究所

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【レビュー】Stellaris

年始に購入した『Stellaris』のプレイ時間が、私の Steam 内のアクティビティで長らくプレイ時間のトップだった『Cities: Skylines』を抜いてトップになりました。そのプレイ時間は、9か月間でおよそ500時間となります。

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パラドックスインタラクティブ恐るべし

これだけ時間を費やしているからにして、Stellaris が面白いことは自明なのですが、何が面白いのかその理由について、私なりに分析したいと思います。

Stellaris とは

Stellaris は、一言で表現すると、未来の銀河系を舞台にした4Xグランドストラテジーゲームです。この手のジャンルの先駆けとしては Civilization シリーズが挙げられます。Civilization シリーズをSFとして換骨奪胎した同シリーズの「Alpha Centauri」や「Beyond Earth」がありますが、これらが一惑星を舞台にしているのに対し、Stellaris では銀河系全体を舞台とするスペースオペラなのが特徴です。

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時は2200年。人類はハイパーレーンを使用した超光速航行(FTL)を実用化し、ついに太陽系外へ進出する

オリジナルの帝国

Stellaris は完全な未来を舞台としているため、何か既存の文明などの枠組みはありません。プレーヤーは初期設定で用意されている帝国を選択するか、新規に帝国を作成してゲームを始めることになります。

帝国を形作る要素には、外見、種族名、帝国名、星系名などのフレーバー要素から、起源、統治形態、志向、国是、種族特性などのプレイアビリティに直接かかわる要素があります。これら無数の選択肢から生成される帝国の組み合わせは膨大であり、また、AI 帝国も同じ過程をもって生成されるため、リプレイ性が非常に高いのが特徴です。

プレーヤー自身の帝国を作るということは、プレーヤー自身のプレイスタイルを模索することでもあります。当然のことながら、起源、志向、国是などの要素は、それぞれシナジーがあるものや、相性の良くないものがあります。初期設定の組み合わせによってプレイスタイルに幅を持たせ、リプレイ性を高めるゲーム性はローグライクのジャンルに通ずるものがあります。

ロールプレイとフレーバー

フレーバーが必要かどうかという議論はさておき、私自身は Stellaris のフレーバーに大いに魅力を感じています。一般的に、ゲームは競技性と娯楽性のグラデーションの中でどこかに位置付くものと私は考えています。競技性の先端を見れば、e-sports囲碁、将棋などを見ることができます。対して、Stellaris に関しては競技性を削いで娯楽性にシフトした作品ではないかというのが私の感想です。というのも、4X 系ゲームの先駆けである Civilization シリーズと比較して、Stellaris は競技性よりも娯楽性を優先していると感じるからです。

この手のゲームにはゲームが終了するタイミングがあります。Stellaris では自帝国が滅亡したときと、勝利年(標準設定で2500年)に達したときです。しかし、滅亡や勝利はそれほど大事ではありません。たいていの場合、実際に滅亡、あるいは勝利する前に、その事実が既定路線として確定するからです。ゲーム終盤まで生き残っていればその勝利はほとんど確定であり、以後のプレイはただの作業になっていしまいます。この問題はストラテジーゲームが抱える難題であり、Stellaris もやはりその問題から逃れられていないのが現状です。しかし、Stellaris ではミッドゲーム(標準で2300年から)、エンドゲーム(標準で2400年から)というゲーム内の区切りを設け、それぞれ特有のイベントが起こるようにして、後半の作業感を軽減させています。たとえば、ミッドゲームでは、大ハーンの覚醒、機械の反乱があり、エンドゲームでは、没落帝国の覚醒、危機があります。いずれのイベントも勢力をおおきく書き換えるものであり、これらへの準備が不十分だとあっという間に滅亡に追い込まれます。

こういったイベントを支えているのがテキストでありフレーバーです。イベントの中で最も規模が大きいとされる「ホライゾン・シグナル」などは、ちょっとしたSF小説を追うような気分があります。このように、イベントやフレーバーが充実していることは、競技性よりも娯楽性を優先し、勝利うんぬんよりもイベントの過程を楽しむロールプレイに適しています。

イースターエッグ原文)としてまとめられているように、ニヤリとするようなSF作品のオマージュも大量に盛り込まれています。国内作品からも、銀河英雄伝説ジョジョ進撃の巨人クロノトリガーなど枚挙にいとまがありません。

太っ腹なアップデート

Stellaris は現状(2021年9月)、まだ活発に継続開発されています。DLCの新作はもとより、無料の大型アップデートが半年に1回ほどの頻度でリリースされています。この大型アップデートはかなり太っ腹で、DLCを持っていないバニラの状態であっても、機能の追加や仕様の変更が大胆に行われます。プレアビリティがかなり変わることも多く、遊びつくしたベテランほど別ゲームではないかと感想するほどの変更が入ります。つまり、アップデートの度にプレイ感覚が変わるため、一向に飽きることがありません。さらに、DLC毎に変更が入るため、DLCを導入しているほど変化を目の当たりにすることになります。

このように、Stellaris は開発側とプレーヤー側が二人三脚状態でいまだに成長しているゲームです。ゲームは売り切りという観念は、もう時代遅れかもしれません。ナンバリングタイトルの概念も今後おおきく変わっていくことでしょう。Stellaris のビジネスモデルは非常に誠実さを感じるものです。

日本語化

Steam のストアでは、言語のサポート状況として、日本語がサポートされていないと表示されていますが、これはあくまで公式がサポートしていないというだけで、システム的にはマルチバイト文字に対応しており、Mod によって容易に日本語化が可能です。

Stellaris の翻訳は有志によってなされています。有志による翻訳と言うとその質に不安を憶える方もいるかもしれませんが、実際のところその質は高いものです。日本語化に関しては信頼して良いレベルです。私は多くのSF作品を読み鑑賞してきたSFファンですが、おおよそ翻訳に違和感を持ったことはありません。これは十分なプレイ人口がいることと、また翻訳に関する必要十分な議論がなされていることの証左でしょう。定期的に大型アップデートが来ますが、その対応も十分早いのではないかと思います(さすがにアップデート直後は翻訳が間に合っていませんが)。翻訳に携わっている方に感謝します。

まとめ

まとめると以下の通りになります。

  • リプレイ性の高さ(ローグライクに通じるものがある)
  • ロールプレイ向きのイベントとフレーバー
  • 活発なアップデート(ゲーム性が変わることも)
  • 安定した日本語化

逆に、悪いところは目立って気付く点がありません。強いて言うなら費やす時間に注意したいところでしょうか。中毒性が高いです。

yayoi.tech