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さて、『イリアム』の続きである『オリュンポス』の感想である。 一言でいえば、ずいぶんと失速してしまったなというところである。『イリアム』は掛け値無く面白かった。ハイペリオンから期待して入ってくる読者も満足できるものであった。しかし、『オリュ…
十数年に渡って「つんどく」した本がある。それが『イリアム』である。私がハイペリオン・カントスの四部作を愛読していることは、既に何度も述べたことである。しかし、私はハイペリオン・カントスを愛読したとはいえ、必ずしも、その著者であるダン・シモ…
ある時、なにげなく黄河や長江の源流域を Google map で眺めていたら、チベット高原の南部をひたすら東進する川を見つけた。川がどのような流路を辿ってどこに繋がるのかという好奇心は、人間の根源に近いところにあるような気がする。私はその川筋を辿って…
第三部の後半です。ついに『ハイペリオンの没落』は完結します。巡礼者の物語も終わりです。最後には、作中で言及されている、あるいはオマージュされているであろう、実在した人物について、私の補遺を載せました。ダン・シモンズの知識の幅広さには到底追…
第三部です。第三部は長いのでさらに前半と後半に分けます。文庫本では下巻の前半(pp.1-248)に当たります。ちなみにハイペリオンの没落は、3部構成で全45節からなりますが、1部はきっちり15節で書かれています。ダン・シモンズの書き方の工夫が少し垣間見…
第二部です。文庫本でいうところの上巻の後半(pp.257-476)に当たります。第二部ではセヴァーンの夢=ハイペリオンの出来事の描写がほとんどを占めます。これは、セヴァーンがグラッドストーンへの悪態をつきながらがっつり睡眠導入剤を飲んだからで、より…
前回、『ハイペリオン』の物語をまとめてから一年以上が経ってしまいましたが、続編である『ハイペリオンの没落』を、にわかにまとめます。これもまた長いので三回から四回に分けて。ひとつひとつの節に対して思うところを解説していきたいところですが、ひ…
SAVE THE CATの法則 SAVE THE CATの法則作者:ブレイク・スナイダー発売日: 2018/08/03メディア: Kindle版 物語の管理を主力とする業界では、この本は当たり前の本でもあるらしいです。門外漢の私にとっては、そういった当たり前の本と出…
最近はいろんなところで三国志を知る人が増えたと思いますが、なかでもゲームで三国志を知る人は多いのではないでしょうか。 私が子供のころなどは、三国志のゲームといったらコーエーの戦略シミュレーションゲームでしたが、 今では三国無双シリーズもあり…
中国の春秋時代と言えば、周が東西に分裂してから、晋が三国に分裂するまでの時代を指す。と言っても、すぐにピンとくる時代ではない。何しろ西暦にして紀元前七世紀のことである。二千七百年前の人間の興亡など気が遠くなるというものである。春秋時代の前…
私は歴史小説が好きだ。その面白さを最初に教えてくれたのは吉川英治の三国志であるが、その三国志を通じて知ったのが宮城谷昌光であった。歴史の面白さは、好きな時代、例えば三国時代から派生して、近隣の時代の歴史を徐々に知っていくところにある。本作…
正直に告白しよう。途中から良く分からない。 私の凡々たる思考では、にわかに理解できるものではなかった。というよりももっと時間が必要というべきか。 それにしても、宇宙という世界を前にして人類の科学技術は未解決問題ばかりで全く心もとない。一方で…
長々と『ハイペリオン』の内容をまとめてきましたが、これで最後です。 巡礼者たちが自らの物語を語りながら、<時間の墓標>を目指す行程をまとめました。 一日目 聖樹船<イグドラシル>で巡礼者たちが低温睡眠から目覚める <イグドラシル>船内で巡礼者…
ハイペリオンの六つの物語のうち、最後の物語である、領事の物語について紹介、解説します。領事の物語は、一番読みにくい物語かもしれません。それでいて、最後の物語にふさわしい伏線回収の要素を多く持っています。といっても、物語は『ハイペリオン』か…
ハイペリオンの6つの物語のうち、五つめの探偵の物語について紹介、解説します。探偵の物語は、ハイペリオン全体の物語における重大な事実が明らかになる点で、重要な物語です。 前回の物語はこちら。 yayoi-tech.hatenablog.com 探偵の物語:ロング・グッバ…
ハイペリオンの6つの物語のうち、四つめの学者の物語について紹介、解説します。学者の物語は、これまでの三篇とは違って、 涙なしには読むことのできない、感傷的なストーリーが特徴です。 前回の物語はこちら。 yayoi-tech.hatenablog.com 学者の物語:忘…
ハイペリオンの六つの物語のうち、三つめの詩人の物語について紹介、解説します。 詩人の物語は、一言でいうと……形容するのが難しい物語です。それは語り手の枠にハマらない性格によるところが大なのですが、言い換えれば人を選ぶのではないかと思われる物語…
ハイペリオンの6つの物語のうち、二つめの兵士の物語について紹介、解説します。 兵士の物語は、一言でいえばアクション映画です。心理描写などのミクロな視点よりも、世界情勢などのマクロな視点で、『ハイペリオン』を導入する役割を持った物語です。 前回…
ハイペリオンの6つの物語のうち、一つ目の司祭の物語について紹介、解説します。 司祭の物語は、ホラー担当ともいうべき最も不気味な物語であり、ハイペリオン四部作への導入を担う物語です。 前回のプロローグはこちら。 yayoi-tech.hatenablog.com 司祭の…
『ハイペリオン』のあらすじと解説を、何回かに分けて記事にまとめたいと思います。 私は事あるごとに SF の最高傑作と言ったらハイペリオン四部作だと、なるべくささやかに主張してきているのですが――SFの金字塔などと評価されている割には――ハイペリオン最…
結局のところ、私にとって SF の最高峰といえばハイペリオン四部作である。それは、この度、三体を読んだ後も変わりがない。とはいえ、三体は十分刺激的で楽しめた。日頃から小説は速読するものではない、通勤の合間にチマチマ読むくらいがちょうどいいのだ…
人間は常に何かを選択している。 そして、何かを選択した裏側には、かならず選択されなかった何かがある。 人生を左右する重大な選択でも、その事実は変わらない。 ナミヤ雑貨店の奇蹟でも、人生を左右する重大な選択をする人間のエピソードがある。その重大…
トンネルに入るときにライトを点けるが、トンネルを抜けるときにライトを消し忘れることはある。スイスのある観光地では、トンネルを抜けた先の駐車場で、多くの観光者たちが、ライトを消し忘れたまま駐車してしまうために、バッテリーが上がるというトラブ…
いかにもタイトル買いしてしまいそうなギャップのあるタイトル。かくいう私も、そのタイトルのギャップに惹かれたからこそ、手に取ったのだった。ただ、その期待に応え得られる内容だったかというと怪しい。残念ながら、ちょっと物足りない、というのが、率…
最近、自分の問題発見能力に執心している。 なぜならば、問題解決能力は重要だが、それよりも先だって、問題発見能力が重要になることに気付いたからだ。その気づきについては、以下の記事でも言及しており、この気づきが、問題発見能力に執心する発端となっ…
チームって良いよね。良い響きだなあと正直に思う。私は、フリーランスとして、一匹狼的な働き方や生活をしているから、チームに対するあこがれが単純にある。ビジネス書かと思うような「the TEAM」という抽象的なタイトルからは、内容は想像しにくい。読後…
博士の愛した数式。読み始めたとき、そのタイトルに違和感はなかった。背表紙には「ぼくの記憶は80分しか持たない」と書かれているし、なるほど、記憶障害のある数学者の物語という推測は、当てはまっている。しかし、読み終わった後、そのタイトルを見直し…
内容の一部を紹介したいと思います。 やってのける~意志力を使わずに自分を動かす~作者: ハイディ・グラント・ハルバーソン,児島修出版社/メーカー: 大和書房発売日: 2013/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 上手く使い分けるのがコツ…
三月、天気の良い某日。片道に費やすことおよそ二時間強、青梅のさらに奥、二俣尾まで足を延ばし、吉川英治記念館に行ってきました。 yoshikawaeiji-cf.or.jp 読書、吉川英治との出会い 私は読書を趣味としています。このブログでも一つのおおきなカテゴリと…
あらすじ 刑務官である主人公は、殺人を犯した山井を担当することになった。山井には死刑判決が下されており、一週間後の控訴期限を迎えれば死刑が確定する。しかし、山井は控訴をしようとしていなかった。児童養護施設で育った境遇を持つ主人公は、自分が持…