最近はいろんなところで三国志を知る人が増えたと思いますが、なかでもゲームで三国志を知る人は多いのではないでしょうか。 私が子供のころなどは、三国志のゲームといったらコーエーの戦略シミュレーションゲームでしたが、 今では三国無双シリーズもありますし、スマホゲームなどの進出で、三国志を題材にしたゲームが本当に増えました。 三国志をテーマにしたゲームでなくても、三国志とコラボしたりして、三国志の露出はどんどん増えているように思います。
ゲームは面白いですが、しかしゲームだと三国志の全体像は見えないんですよね。 そこで、三国志を知っているようで知らない初心者の方にオススメする本を数冊ご紹介します。 三国志を知るならば何よりも本が一番です。
吉川英治『三国志』
小説です。 紹介しておいてなんですが、実のところ退屈という感想をよく聞きます。 私は中学時代に擦り切れるくらい読んだものなのですが、なにせ戦前に執筆された三国志ですから、現代の小説と比べるとどこか刺激の少なさを感じるのかもしれません。 小説も進化しているでしょうから、様々なテクニックが施された現代小説に読み慣れていると、吉川英治はどことなく素朴で退屈に感じるのだと思います。 それでもなぜ私が吉川英治をお勧めするかというと、この作品が日本の三国志の文化や価値観の根底を作ったからです。 その後の日本の三国志観に大きく影響を与えた作品ですから、初めて読む三国志としては最適でもあります。 普段、小説をあまり読まない人や、中学生くらいのお子さんにも最適だと思います。
(この表紙が懐かしい!)
横山光輝『三国志』
漫画です。 劉備とか洛陽とか、そういった中国の人名や地名、固有名詞にそもそも馴染みがない人は、やはり漫画がいいかなと思います。 続出する固有名詞に抵抗を感じる人は意外と多いです。 最初は、人名なのか地名なのか国名なのか直感で分からないのです。 かく言う私もそうでした。 その点、漫画は視覚情報を補ってくれますから、あまり抵抗なく読み進められるのではないでしょうか。 子供でも無理なく読めます。 横山光輝の『三国志』は吉川英治の『三国志』をそのまま漫画にしたものと言ってよいと思います。 実は私にとって初めての三国志は横山光輝だったのですけど、全60巻というボリュームが当時小学生であった私には集めるのに根気がいるものだったせいで、私が三国志を通しで読んだのは吉川英治が最初なのでした。 今は漫画喫茶とかありますしね。カジュアルワイド(全25巻)、愛蔵版(全30巻)などもあるので、大人買いするのもありです。
- 作者:横山 光輝
- 発売日: 1988/11/20
- メディア: コミック
北方謙三『三国志』
小説です。 吉川英治の『三国志』に退屈を覚える人には、むしろ北方謙三の『三国志』をお勧めします。 一般にハードボイルドとして知られる著者ですが、その経験が三国志に新しい風を吹き込んでいます。 時代の流れや歴史というマクロな視点よりも、登場人物の生き様のようなミクロな視点で物語が進みます。 クローズアップされる人物には著者の独自性が現れています。 どこか人間臭さが排除されがちな歴史小説の中で、登場人物たちに強い個性をもたせた北方謙三の『三国志』は、三国志の中でも異色といえるでしょう。
- 作者:北方 謙三
- 発売日: 2001/06/01
- メディア: 文庫
李學仁・王欣太『蒼天航路』
漫画です。 作者の王欣太自身が「吉川英治の『三国志』を読んだが冒頭から嫌気がさした」と述べているように、吉川英治に馴染めなかった人は『蒼天航路』をお勧めします。 ただ普通に読んでも面白いのですが、吉川英治や横山光輝が作った三国志のスタンダードを知ってから読むと、これがまた面白いです。 人物に強くフォーカスしたときの表現力は漫画ならではといえるかもしれません。 北方謙三が人物に強くフォーカスして表現しきれなかったもの、あるいは横山光輝が漫画を媒体にしながらも表現しなかったものがこの作品にはあります。
宮城谷昌光『三国志』
正直に言えば、本書は初心者向きではありません。 三国志が好きだと自覚している人や、歴史好きの人に向けられた小説です。 ですので、三国志をより楽しみたい人への、次のステップとしての本になります。 最大の特徴は三国志演義を筆頭とする脚色が一切なされておらず、史実が重視されている点にあります。 従って、物語の面白さは、歴史の面白さに限りなく近いものになっています。 史実をもう少し詳しく知りたいけど、正史や史書はハードルが高い人には、導入点にもなります。
- 作者:宮城谷 昌光
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 文庫
まとめ
いかがでしょうか。 上記で紹介した三国志をどれか一つでも通しで読めば、三国志がどんなものかはほぼ理解できるでしょう。 三国志を人に教えることもできます。 これをきっかけに三国志の沼にハマっていくもよし、ハマらないのもよしです。