『Megaquarium』は水族館運営シミュレーションゲームです。
良かった点
- 豊富な生物種
- ほどよい制限
- 優れたレベルデザイン
- 統一的なグラフィックと音楽
悪かった点
- ゲーム性が単調
- 水棲の哺乳類・鳥類がいない
本文
まず、飼育できる生き物の種類は豊富です。熱帯性、寒帯性の生き物がおよそ100種類用意されています。それぞれに、好むエサ、体格、攻撃性、群れを成すかどうかなどの細やかな個性(飼育要件)が設定されていて、ひとつの水槽でどのように生き物たちを飼育するかという管理を面白くさせています。ただし、生き物たちのコラボレーションはゲーム上に何ら反映されるものではないところが少し残念なところです。
『Megaquarium』では水槽を自在にレイアウトすることはできません。あらかじめ形が決まったいくつかの種類の水槽が用意されていて、それらを配置していくことになります。したがって、決められた形の水槽の中から、いかに自分が思い描く水族館を作るかという、レイアウト面に面白さが生まれています。しかし、逆の見方をすれば、ただ水槽を配置していくだけでは、同じような水槽が単調に並ぶだけの水族館になることになります。
取り扱うことのできる生き物や施設は、水族館に付与されているランクによって決まります。ランクは、来場者の評価によって決まり、ランクアップによって取り扱えるアイテムがアンロックされていきます。つまり、ゲーム序盤から全てのアイテムを使えず、徐々に使えるアイテムが増えていくという、初心者にもとっつきやすいレベルデザインになっています。一方、上級者向けにはサンドボックスモードでアンロックを自在に設定できるため、最初から大型の水族館も作ることができます。
グラフィックはリアル志向ではなくカジュアルです。視点を一人称視点にしてじっくり生き物を観察することもできますが、これはグラフィックのカジュアルさとはあまり相性は良くありません。どちらかと言えば、チマチマと動く生き物や来場者を俯瞰で眺めて楽しむという、箱庭的な楽しさが強いです。また、サウンドも環境音だけでなくBGMがきっちり用意されています。BGMはプレイ中延々と聞き続けることになりますが、これが雰囲気に合っていて嫌にならない、よくできたBGMだなと思いました。
ゲーム全体の設計がカジュアル志向であるということは、一方で、そのゲーム性はやや単調です。自由度はそれほどな高くなく、用意された制限の中で楽しむことになるので、結局、最終的に行き着くプレイが同じになりがちで、リプレイ性は高くありません。自分の中の最適解を見つけてしまうと、それで終わってしまう印象があります。前述した通り、生き物の種類は多いため、生き物たちのコラボレーションが何らかの形でゲーム上に反映される仕組みがあると、複雑性と深みが増すのではないかと思いました。
また、生き物の種類は多いとはいえ、それは魚類や水棲の無脊椎動物に限定されています。それはそれで水族館として成立はするでしょうが、私たちが良く思い浮かべるであろう、イルカ、アシカ、ペンギン、カエルなどといった、水棲の哺乳類・鳥類・両生類などは一切登場しません(ウミガメはいます)。これは少々さみしいです。また、現実の水族館でいえば常設展示に当たる要素しかないため、イベント、パフォーマンス、ショップなどのアトラクション要素に不足を感じます(一応トークショーやギフトはありますが簡素です)。
日本動物園水族館協会によれば、動物園や水族館には以下の4つの役割があるとしています。
- 種の保存
- 教育・環境教育
- 調査・研究
- レクリエーション
こういった本来の水族館の目的が、ゲーム上に反映されるとゲーム性に奥深さが生まれるのではないかと思います。とはいえ、すでに『Megaquarium』は十分なゲーム性を備えた楽しいゲームになっています。日本語化もされています。
素晴らしいことに、『Megaquarium』は以下の Dev blog の通り、2020年12月時点でもまだ開発が継続中です。現行のゲームデザインが大幅に変更されたり、大きなコンテンツが追加されることは無いかもしれませんが、細やかな部分はどんどん改善されていきそうです。
最近のゲームは、パッケージ販売でも売って終わりというゲームは少なくなりつつあります。今後の開発陣の情熱に期待しましょう。