弥生研究所

人は誰しもが生きることの専門家である

叱られて伸びるのか、褒められて伸びるのか

結論

叱っても、褒めても、人は伸びます。 ただし、正しく叱った場合、正しく褒めた場合に限ります。 叱っても人は伸びない、あるいは、褒めても人は伸びない、という偏った認識は、叱る、褒めるという行為の認識が間違っています。

「叱る」「褒める」の意味

そもそも、「叱る」と「褒める」の言葉の意味を、まずは共通の認識としたいですね。

叱るとは、

目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。「その本分を忘れた学生を―・る」 呵る(しかる)の意味 - goo国語辞書

褒めるとは、

人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。たたえる。「勇気ある行動を―・める」「手放しで―・める」「あまり―・めた話ではない」⇔そしる/けなす。 褒める/誉める(ほめる)の意味 - goo国語辞書

ちなみに、「怒る」は「叱る」とほぼ同義と考えてもいいですが、「叱る」よりも「怒る」ほうが、より感情的なニュアンスが高まります。自分の感情をコントロールできずに怒っている状態は、そもそも論外なので、この記事では、「怒る」の意味は「叱る」と同義として考えています。

「叱る」「褒める」ことにどんな効果があるか

言葉の本来の意味で考えてみましょう。

叱ることは、その人の良くない点を指摘することですから、その人が良くない点を自分で認識していれば、叱られることによって認識が強まります。逆に、自分で認識していなければ、新たな気づきとして認識が生まれます。叱られることの効果は、自分の欠点や短所が改善するところにあります。したがって、叱られたら人は伸びるのです。

一方で、褒めることは、良い行いを評価して伝えることですから、その人が良い行いをしたという自覚があれば、自覚が確信に変わります。逆に、もし自覚していなければ、自分の行いが良いことだったのかと気付くことができます。いずれにしても、その良い行いはより良く継続されやすくなります。したがって、褒めたら人は伸びるのです。

あなたの認識は合っていますか?

さて、叱ることの意味、褒めることの意味について、あなたの認識は合っていますか?

叱った人、褒めた人は、いまいちど、自分が何をしたのかを考えてみましょう。 あなたが叱ったと思っていることは、本当に叱っていたのでしょうか? あなたが褒めたと思っていることは、本当に褒めていたのでしょうか?

叱られた人、褒められた人は、いまいちど、自分が何をされたのかを考えてみましょう。 あなたが叱られたと思っていることは、本当に叱られたのでしょうか? あながた叱られたと思っていることは、本当に褒められたのでしょうか?

よくある間違いを挙げてみます。

  • 叱るとは、怒鳴ったり理詰めで相手を威圧し、相手を委縮させることではない
  • 叱るとは、自分の要求を伝えることではない
  • 褒めるとは、おだてて相手を喜ばせることではない
  • 褒めるとは、行いそのものを評価するもので、結果を評価するものではない

結局はコミュニケーションの難しさ

叱ることも、褒めることも、どちらも難しいんですよ。上司から部下に一方的に伝えるだけの単純な作業ではないのです。双方向のコミュニケーションなんです。叱られたポイントや、褒められたポイントについて、そもそも双方の価値観のレベルで認識がずれている場合もあります。価値観を合わせないと、叱ろうが褒めようが何も伝わりません。

私も、リーダーや上司の立場の経験があるので、その難しさが良く分かります。仕事のストレスの大半が人間関係に起因するという人がいるのも、納得ができます。叱られらいやだな、褒められたらうれしいな、ってどうしても思いますよね。でも、叱ることも褒めることも、どちらも本来は感情とは無関係なのです。最高の叱り方、褒め方は、相手に叱られたことに気付かせない、褒められたことに気付かせないことだと思います。